病院が当直医に対して当直料を支払う場合、その金額に大きな差が出ているのをご存知でしょうか。
例えば、ある病院の勤務医が当直医を担当した場合に支払われる金額と、同じ病院に外部からアルバイトとして勤務している医師に支払われる金額に倍の差がでていたということもあります。また、当直中も通常勤務と同様の仕事内容にも関わらず、当直手当や当直料を払ってもらえないという声を聞くこともあります。これは違法行為ですが、医療業界の悪しき習慣で医師や看護師が泣き寝入りしている病院も少なくありません。実際に2013年には、奈良県で産科医2人が当直勤務の当直料・手当などの支払いを県に求めた訴訟をおこし、県は敗訴。結果的に、奈良県は医師に対して当直料を約1500万円の支払いを命じられています。しかし一方で、病院によっては「医師は管理職なので残業手当=当直料を支払う義務はない」という持論を展開して支払わず、現在も当直料を正当に受け取れていない医師は多くいると言われています。
そこで、しっかり当直料を支払う病院とそうではない病院を見極めるチェックポイントをご紹介します。
1点目は、「年俸制」という提示についてです。年俸制をとる病院の中には「深夜・休日以外の時間外手当は年俸に含まれている」という考えに基づいている場合があります。年俸制の病院へ転職を検討している場合は、「当直手当は年俸に含まれるか、別途手当がでるか。その金額は時間外手当という方式をとっているか」ということを事前に確認しましょう。当直手当が出ても、法外に安く設定されていたりすることもあるので注意が必要です。また、年俸制だからといって当直業務が時間外労働に該当する場合は手当を支払わないという行為は違法です。年俸にそういった時間外手当を含む場合は、契約書に明記されている必要があるので、しっかりチェックすることが必要です。
2点目は、「役割等級別のみなし時間」です。これは、1カ月○時間の当直などの時間外労働は年俸に含むということを意味していることが多く、重要なのは何時間が対象になるのかという点です。先にご紹介した「管理職だから手当はつかない」という持論がまさにこの例です。病院の中には当直業務そのものを時間外労働とみとめていない場合もあります。この点を事前に確認しておかないと、働き始めてから「こんなはずじゃなかった」と早期退職につながり、キャリアに傷がつくことにも・・・。大きい病院だから大丈夫だろう、と思って痛い目にあう医師は少なくありません。
3点目は、「当直の業務内容」です。誤解を恐れずに言うと「寝当直」なんていう表現にもあるように、基本的に救急患者の対応が少なく当直担当であっても実際には寝ている時間が多いという当直勤務もあります。このような場合、時間外労働として認められないのが現状です。しかし多くの場合(特に麻酔科医や産婦人科医、小児科医など)、当直業務は通常業務と変わらない対応なのが一般的です。そこで、当直業務の内容をしっかりヒアリングして、当直は時間外労働として認識しているのかをチェックするようにしましょう。
ここでご紹介した通り、「病院が当直料を正当に支払う意思があるか」というポイントは求人情報だけでは見落としがちです。転職支援サービスを利用される場合は、エージェントを通して事前確認が必要です。またお一人で転職活動される場合は、病院への確認事項を書面に残してもらったり、当直業務に関して実際にその病院で働いたことのある医師に当直状況や当直手当の支払い状況についてヒアリングしてみるとよいでしょう。このような点を押さえていれば、当直料や当直手当を不当に支払ってもらえないというリスクを最小限にすることができます。
では、実際に当直時にも通常勤務と同様の労働を行っている場合、本来正当な当直料というのはいくらになるのでしょうか。
まず、時間外労働については「割増率」というものが適用されます。深夜や休日に勤務をした場合に、通常時給に対して賃金を割増すという意味合いで使用されています。例えば、平日の時間外(残業)は通常賃金の1.25倍、深夜勤務(22時~午前5時の間)は1.5倍の賃金を支払うことが雇用主には求められています。休日の割増率はさらに高く、時間外(残業)は通常賃金の1.35倍、深夜勤務(22時?午前5時の間)は1.6倍となります。
このルールに基づき、当直料を算出してみましょう。今回は、勤務医の通常時給を4650円とした場合で、22時~翌日午前5時までの7時間当直勤務をした場合の当直料をご紹介します。平日深夜22時~翌日5時までの勤務の場合、(4650円×1.5)×7時間=48825円が超過勤務代として支払われるべきです。これが休日の場合は、(4650円×1.6)×7時間=52080円となります。しかし、ある病院では宿日当直手当は、8時間給与の3分の1(つまり)12400円しか支払わないという施設もあります。
このような状況を打破するために、勤務時間を正確に把握しようとICカードを導入したり工夫を重ねている病院があるのも事実です。転職される際には、勤務医の超過労働に対する意識を病院側がしっかり持っているかを確認することが非常に重要と言えます。
当直料を正当に支払っている病院は、勤務医の過重労働も厳しく管理されているところが多く、働く医師にとって安心して健康に働ける場所とも言い換えることができます。
そこで、今回は「当直料を正当に支払う求人」をご紹介したいと思います。非公開求人も多数ございますので、お気軽にお問い合わせください。