精神科の医師が転職先を探す際に、神奈川県の自殺者傾向を把握することで精神科医を本当に必要としているエリアや患者層を知ることができます。年齢やエリアによって特性があり、それらを把握した上で転職することで、自分が得意とする分野で働けたり、今後伸ばしていきたいスキルを習得できる転職を実現することができます。
まず、全国の自殺者数の傾向についてご紹介します。警察統計:発見日発見地調べでは、1998年以降2011年までの約15年間、自殺者数は3万人以上で推移してきました。しかし2012年に調査開始以来初めて3万人を下回り2013年も継続して減少傾向にあります。自殺の原因とされる精神疾患の割合は、気分障害(うつ病)が30.2%と最も多く、続いてアルコール依存症が17.6%、統合疾病症が14.1%、パーソナリティ障害が13.0%となっています。
次に、神奈川県の自殺傾向についてご紹介します。調査が始まった1997年は1038名でしたが翌年1998年には1697名に急増、1999年には1758名とさらに増加しています。その後2001年〜2008年まで1600名前後で推移しますが、2007年に1845名に急増しこの状況は2011年まで続いています。直近2012年・2013年には減少傾向にあります。
性別でみると男性が女性の約2倍以上の開きがあり約1000名、女性が500名弱ほどです。年齢別では、40〜49歳が最も多く20.2%、次に30〜39歳が16.6%、50〜59歳は16.2%と続いています。
自殺の原因は、健康問題が最も多く、ついで家庭問題、経済・生活問題、勤務問題、男女問題、学校問題と続きます。例えば、完全失業率と自殺数との相関は高いことがわかっています。また、40~64歳では未婚・離別・死別などで配偶者がいない方が自殺との関連が強いことが分かっています。それ以外にも、65歳以上になると単身の方が関連が強いことが分かっています。
このような傾向を踏まえ、神奈川県にある精神病棟を持つ医療機関69施設についていくつか紹介します。まず神奈川県内で精神病床数が多い順に紹介すると、横浜舞岡病院(横浜市戸塚区)が600床、福井記念病院(三浦市初声町)が498床、藤沢病院(藤沢市)が480床、横浜相原病院(横浜市瀬谷区)が441床、曽我病院(小田原市)が399床となります。横浜舞岡病院は、老人性認知症専門外来を開設されています。精神療養病棟だけでなく、精神デイケアや認知症治療病棟もある大規模精神病院です。また、福井記念病院は創業者が開放型精神医療の先駆者であったこともあり、現在もその精神を貫いています。また思春期対応病棟、精神科急性期治療病棟にも取組まれ、精神科治療におけるパイオニア的存在と言えます。藤沢病院は、精神科作業療法を取り入れた治療を行っています。それ以外にも、退院後の患者ケアとして精神科訪問看護、精神科救急対応にも取組まれています。
しかし、どの病院がどんな姿勢で対応されているかという情報は表面だって出てこないため、精神科医が神奈川県内の病院に転職を検討する際に、どうしても年収や勤務時間や疾患で選択してしまう傾向にあります。しかし、本当に効果がある治療を目指しているかを入職前に確認する方法があれば、質の高い転職を実現できるはずです。そこで、次の章では「神奈川県で精神科医募集している病院のチェックすべき事項」についてご紹介します。
年収やお休み、疾患や治療実績といった表面的な情報のみしか与えられずに転職先を決めている精神科医は大変多くいらっしゃいます。本来であれば「医療の質の高さ」「チーム医療連携」についても事前に知っておきたい、というのが医師の本音ではないでしょうか。そこで、「精神科を標榜する病院のチェック項目」についてご紹介したいと思います。これらのチェック項目を確認することによって、その病院がどれだけ患者視点で質の高い治療を行っているかを把握することができるようになります。
(1)「薬物療法等の身体療法」と「認知行動療法や社会生活技能訓練(SST)などをメインとする心理社会的療法」の割合
精神科治療もアプローチ方法によって、その効果や効果がある疾患も違いがでてきます。精神科医である先生ご自身の考えに近い治療法を行っている病院を選択することが転職後の違和感を防ぐことにつながります。
(2)抗精神病薬の多剤・大量投与
単剤投与と比較した有効性が証明されていない上、副作用リスクも高まる多剤・多量投与に関して事前に確認することが重要です。多剤・多量投与を行っている病院は少なくないため、実際に入職されてからその点に疑問をもたれて離職されるケースも少なくありません。
(3)認知行動療法等の精神療法の習得・教育の有無
効果が明らかになりつつある治療法ですが、その技術を習得する機会が少ないのがネックと言われています。そのため、認知療法等を極めたい場合は、指導者の有無、教育環境の整備が十分か確認する必要があります。入職後に、指導する精神科医が技術を十分に習得されていないケース、教育の場を与えてもらえないケースは少なくないためです。
(4)診療プロセス・効果のデータ収集・公開制度の有無
海外では積極的に採用されている「治療内容・効果をまとめたデータ収集・公開」ですが、日本ではまだ発展途上と言えます。このようなデータ収集を積極的に行っている医療機関は、治療の質向上に余念がなく日本における精神科治療のリーダーシップ的存在になるでしょう。効果をともなう精神科治療について勉強・研修したいという精神科医であれば、このような病院への転職がスキルアップにつながるでしょう。
ここで紹介したチェック事項以外にも、より重篤な精神疾患をかかえた患者さんを診ていきたい場合は「精神科救急の体制」をチェックする必要があります。精神救急は、体制の整備や医療機関によっても受け入れ態勢、システム利用が地域によってまちまちなのが現状です。また、救急対応は精神救急のみで完結するものではないため、一般救急チームとの連携も必要になってきます。
また、最近は精神科病床における長期入院の改善施策もたてられ、入院日数も短期化しています。そこで、家にいながらも治療を受けられる精神科訪問看護にも注目が集まっています。まだまだ未開拓の分野でニーズが高いにも関わらず診療方法や医療者の研修が行き届いていないことが課題とされています。そのため、精神科訪問にご興味のある方は、どのような治療をどのような役割分担で実施しているのか見学して見極める必要があります。
このように病院やクリニックで募集されている求人情報だけでなく、精神科医としてどのような治療をしたいのか、その治療を実現できる環境が整っているかをチェックできるよう準備することが重要です。
神奈川県の中には精神科病床をもっている病院が69施設あります。規模や治療方針、教育環境など多岐にわたりますが、そのなかでも厳選おすすめの精神科医募集求人をご紹介します。
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